山梨県上野原市は県の最東端に位置する、人口約2万2千人の小さな市。全国的に有名な観光地や産業はないが、四方に千メートル級の山々があり豊かな自然に恵まれている。UENOHARA SUNRISE.EXE(ウエノハラ サンライズ エグゼ)はそんな静かな街をホームタウンに、今季から3x3.EXE PREMIERへの挑戦を始めた。上野原市はオーナである、立川光昭氏の出身地。年々人口が減少し、過疎化が進む地元を活性化させようと立ち上がった。

「言い方は失礼ですが、私には自分の出身地が元気がなくなり寂しくなっていく姿を見たくない思いがあります。そのために、地域に住んでいる方々に勇気を与えたり、熱狂できるなにかを作りたい。生徒数が減っているとはいえ、上野原市には子供たちがいます。彼ら、彼女たちにも、地元に誇れるなにかを与えたいと考えていました」

とはいえ人口2万人の町に、たとえばJリーグのチームを作るのは現実的ではない。どうするかと思案していた立川オーナーの頭に、ふと数年前に出会っていた3x3がよぎった。

SUNRISE FES 2024 in 上野原市でのチームお披露目©UENOHARA SUNRISE.EXE

「3x3は、お祭りの延長みたいな規模でやれるんだ。そのようなことを、ぱっと思い出したんです。それで3x3.EXE PREMIERのリーグ事務局に問い合わせさせていただいて、ぜひこの上野原に3x3プロチームを作りたいという思いをお伝えしました。そこから立ち上げたというのが、チーム結成の経緯ですね」

上野原から山梨の県庁所在地である甲府市までは、公共交通機関でも車でもおよそ1時間。一方で東京都の八王子市へはともに30分程度と、東京圏のほうが距離は近い。それゆえに上野原に住む人々にとって、自分たちの街にアイデンティティを持ちにくい面があることは否めない。

オーナーの立川光昭氏©UENOHARA SUNRISE.EXE

「まさに、そうなんですよ。みんな上野原が好きだと言いたいのですが、よその土地の人に『なにがあるの』と聞かれると困るんですよね。自然があって富士山も見えますが、富士山を見に出掛けるなら富士吉田市や河口湖、山中湖となってしまいます。有名な産業があるわけでもないですし、悪く言えば中途半端な状況でアイデンティティが持ちにくい」

だからこそと、考えた。

「単純にご当地キャラを作るだとか特産品を生むとかよりも、街のみんなが熱狂できる中心にあるものがいい。それにはプロのスポーツチームは、ぴったりだと思いました」

UENOHARA SUNRISE.EXEは上野原を外部にアピールすると同時に、チームを中心にして街の人たちが集まってくるような存在であることを目指す。

「UENOHARA SUNRISE.EXEが、上野原のシンボルタワーになればと思っています。そのためには、僕たちがこの街のためになにかしてあげるといった上からの立場ではなく、ここに暮す人たちと同じ目線でなにかを作り上げていく。それが大事だと考えています。街のみなさんも上野原を盛り上げるために、なにをやっていいかわからないのと、なにかをやって上手くいくのか。そのことに心配や不安があり、自信がないんだと思うんです。だけどスポーツという旗印を掲げると、すごく集まりやすい。それは、間違いなくありますね」

SUNRISE FES 2024 in 上野原市の様子©UENOHARA SUNRISE.EXE

立川オーナーはリアル&インターネットビジネス事業やインフラ、メディアなどのビジネスを展開するエムグループホールディングアンドキャピタル社の創業者にして会長。多岐にわたる事業展開のなかで、中心になるのはPR業だという。その本業の強みを生かし、3x3.EXE PREMIER開幕前の5月6日に、チームのティップオフイベントともいえる「SUNRISE FES 2024 in 上野原市」を開催した。

県外からチームを招いてUENOHARA SUNRISE.EXEの初試合を行ったほか、レコード大賞優秀賞を受賞した谷村奈南による国歌斉唱、元東方神起のユチョンのライブなど音楽イベントも絡めて展開して会場は満員。3x3としては破格の1万5000円の席が完売し、1,900人の来場、プロバスケチームとしては初めてのメタバース上の生中継は3万5000人が同時視聴と驚くべきリアクションを獲得した。

「私たちの本業はPRの会社ですので、話題を作るのは得意です。なのでまずは、花火を打ち上げようと。花火が上がると、人が集まってくるんですよね。そこでアーティストの方たちも絡めて、UENOHARA SUNRISE.EXEのお披露目を行おうと。アーティストを目当てにメタバース上の生中継にアクセスした人たちにも、UENOHARA SUNRISE.EXEの存在がアピールできました。当日会場にお越しいただいた方々はもちろん、メタバース上でも3万5000人に同時視聴していただいた。これは最初のイベントとしては、成功したかなと捉えていいます。実際にアーティストファンがイベントをきっかけにバスケの試合に毎回100名近くが駆けつけてくれるようになりました」

さらに、話題作りには事欠かない。ネット配信されている恋愛リアリティ番組「バチェラー5」に出演していた元3x3選手でモデルの長谷川恵一を現役復帰させて獲得した。一般的な知名度が高い彼を加入させることで、UENOHARA SUNRISE.EXEへの注目度が高まることを期待したことも少なからずあっただろう。

#1 長谷川恵一選手と応援に駆け付けた上野原市村上信行市長©UENOHARA SUNRISE.EXE

「最初はブランディング的というか、彼もなんとなくやるだけなのかなと思っていたんです」

ところがチームに合流してからの長谷川の姿勢は、立川オーナーの想像を良い意味で裏切った。

「実際には本業の仕事よりもバスケに専念して、すごく頑張っている。元々はアドバイザーみたいなことをお願いするという話だったのですが、彼のほうから『選手としてもチャレンジしたい』と。私は『ほかの選手と公平に競って、力があるなら』と言った結果、彼はロスターの座を得ました。日本人最年長の選手が泥にまみれてやるみたいな姿勢は、いい見本になっていますね。それと彼自身が本当にバスケが好きだということが伝わるので、とてもいいチームにはなったと思っています」

モデルの経験があり、『バチェラー』にも出演。華やかなキャリアを持つ長谷川が汗まみれになってボールを追う姿に、これまでと違った彼の魅力が表れることだろう。

「同じチームの僕が言うのも変ですが、彼には正直、仕事柄プライドが高くて特にはチャラついてるイメージも持たれるんです。これまでに個人的な付き合いもありましたが、彼がこれほどバスケが好きで、こんなに本気で頑張るんだと驚きました。バスケをしている長谷川選手は、また別の本質が表れている。その姿がチーム内でひとつの見本になり、見ている人も応援したくなる。そういった、良い循環になっているかなと思いますね」

もうひとり、UENOHARA SUNRISE.EXEの注目選手は山田光哉。チーム結成にあたってトライアウト開催の告知をすると、107名の応募者があった。そのなかでただひとりの合格者が彼だった。

「彼は上野原小学校、上野原中学校を卒業した、チームで唯一の上野原出身者なんです。大学は山梨学院大に進んで、4年生で部活を引退して就職が決まっていましたが、トライアウトに合格したのでUENOHARA SUNRISE.EXEにプロ契約として入りました」

山田は地元出身者であることを考慮されたのではなく、純粋に実力を評価して合格を与えられた。

「今だから言えますが僕は正直『多少は実力が劣っていても、地元出身者を獲っちゃおう』という気持ちもありました。だけど山田選手は、確かな実力がありました。それに、すごく真面目なんです。これまで5人制ひと筋だったので3x3への適応にはまだ苦戦していますが、それも乗り越えていずれ中心選手になってくれるはずです」

#64 山田光哉©UENOHARA SUNRISE.EXE

参戦するからには、初年度からプレーオフ進出が目標。それと同時に事業を多角的に展開してきた経験から、街を興すためには中長期的な視点と取り組みが必要であることを心得ている。

「UENOHARA SUNRISE.EXEの今後を考えれば、20年後や50年後には違う人たちが運営する。ですから運営側の人の入れ替えも含めて、しっかりと地域に根ざすものにしていかないといけない。ヨーロッパのサッカーチームは、まさにそうなっていますよね。ファンの方たちも親から子に、孫にとなっていくような文化として形成したい。偉そうに言っていますが、上野原の街の規模から考えると、これは大きな事業だと思います。UENOHARA SUNRISE.EXEを通じて、そういう文化を生み出していきたいと考えています」

3x3.EXE PREMIER 2024 Round.1(焼津PORTERS)で初勝利を上げた©UENOHARA SUNRISE.EXE

アイデンティティを持ち難い我が街に、それを持つための日の出の陽光を差し届ける。チーム名にはその思いも込められている。

「まさに、サンライズという言葉の通りですね。だれにでも必ず夜明けが来るし、みんなに陽が当たる。どの街、たとえ田舎でも、みんなで力を合わせればできるんだ。それを言葉だけではなく、行動と結果で証明したいと思っています」

クラブの合言葉は「人口約2万人の小さな町から世界へ」。UENOHARA SUNRISE.EXEは自分たちの活動で地元の街に陽を昇らせ、やがてその光を世界に差し込ませる。その強い信念のもとに、第一歩を踏み出した。

(Text by カワサキマサシ)

TEAM information

Team:UENOHARA SUNRISE.EXE
(ウエノハラ サンライズ エグゼ)
Category:MEN
Hometown:山梨県上野原市
Since:2024