“ヴェルディ”と聞けば、Jリーグのサッカーチームを思い起こす人も多いだろう。確かに1969年に創設されたサッカーチームがその始祖であるが、2000年代に入って総合クラブ化を進め、2018年に一般社団法人東京ヴェルディクラブを設立。現在では男女のサッカーをはじめバレーボール、野球、ゴルフ、スケートボード、eスポーツなど全17競技21チームを傘下に抱える。
3x3は2019シーズンから男子チームが3x3.EXE PREMIERに参入し、年々実力を高めている。そして今シーズン、満を持して女子チームTOKYO VERDY.EXEが参戦。多数の競技に取り組むなか、3x3に参入した理由を運営担当の鈴木雅崇氏が語る。
「サッカーは伝統的なスポーツでありますが、3x3は新しいアーバンスポーツです。伝統スポーツは専門の競技場に多くの観客を集め、チームには監督がいてコーチがいてと、かなりガチっとした感じのイメージがあります。それに対して3x3は3x3.EXE PREMIERのように街のランドマークで大会を行っていたり、競技に関しても選手は選手同士の話し合いのなかでお互いをリスペクトして、コミュニケーションを図ってやっていく。今までの伝統スポーツとはまったく違う文化であることに大きな魅力を感じました。そこの部分をヴェルディに取り入れて、ヴェルディからも発信していこうということが3x3参入の大きなきっかけでしたね」
3x3.EXE PREMIERは、結果を残せば世界を通じる道がある。参戦にあたっては、それも大きな動機付けになった。
「東京ヴェルディクラブの掲げる目標のひとつが、『世界に通じる人材を育成する』。それが男女とも、TOKYO VERDY.EXEの目的のひとつでもあります。今いる選手、今後入ってくる選手たちが世界の舞台に立てば、世界に通じる人材ということになります。そんな彼ら、彼女たちの姿を見た子供たちが『ヴェルディってすごいチームだな。あそこでやってみたい』と思ってもらって、それを目標にしてもらう。いずれそのコたちがヴェルディに入ってプロの道に進み、そこで世界に羽ばたいていけばベストですね」
3x3の女子カテゴリーには初参戦だが、前述したように男子チームが2019シーズンから参入し、ヴェルディクラブ内の他競技に女子チームもある。初年度ながら3x3、そして女子チームの運営経験と、それぞれに知見を持っていることは総合クラブならではのアドバンテージになるだろう。
「男女両方をやっている競技もありますので、女子チームのマネージメントの経験もあります。現在はクラブ内の他競技から、どういった形で女子チームを運営するのかというような話を聞いて、そこの知見を生かしてる状況ですね。これは総合クラブとして多数の競技を抱えている、ヴェルディならではではの強みだと思います」
1年生チームながら、メンバーは実に豪華だ。ロスターに名を連ねる8人のうち、5人が昨季のチャンピオンチームYOKOHAMA G FLOW.EXEでプレーしていた。TOKYO VERDY.EXEは初年度から、本気で頂点をねらう。
「それは、もちろんです。4月に女子のデビュー戦になった大会で優勝しました。3x3.EXE PREMIERでももちろん、初年度から優勝をねらっていきます」
チームを編成するうえでポイントにしたのは、チームワーク。3x3はコートに立つメンバーが3人と少ないが、それだけに連携が重要視される。新規参入チームはメンバーが寄せ集めにならざるを得ない場合もあり、チームワークを形成するにはどうしてもある程度の時間がかかってしまいがちだ。TOKYO VERDY.EXEは勝つために、チームの第一歩からチームワークにこだわった。
「今まで我々が経験していなかった3x3の女子選手を集めるにあたり、多方面から強い選手を集めてくる方法もありましたが、それよりもチームワークができている選手達を集めて、結束力が強いチームを立ち上げることがいちばんかなと考えました。男子も同様でして、チームワークがあるかないかでかなりチーム力が変わってきます。なので女子もチームワークによる、チーム力の向上を意識しました」
昨季のチャンピオンチームから加わったのは#5 矢上若菜、#8 井齋沙耶、#9 吉武忍、#7 八木希沙、#12 角畑莉子。なかでも中心的存在になるのは、#5矢上だ。
「彼女は当然ながら経歴がありますし、チームのメインの選手でもあり、もっとも注目度の高い選手かなと考えています。選手としてはチームの司令塔であるので、全体を見てまとめ上げて、そのうえでプレーの起点となって動いている。やはり中心と言いますか、柱のような存在ですね。」
「もうひとり注目選手をあげるなら?」と話を向けると、鈴木運営担当は「うーん……。全選手注目なので、難しいですね(苦笑)」と困惑の表情を浮かべながら、こう答えてくれた。
「あえてもうひとりあげるとすれば、#9吉武選手ですね。彼女は非常に明るくてつねにポジティヴで、チームのムードを作ってくれるムードメーカーなんです。プレーにおいても、得点を積極に獲ってくれます。とても活動的ですし、活発。そういったイメージの選手ですね。コート上でもよく声出して、チームを引っ張っています」
3x3.EXE PREMIERの2024シーズンの開幕が、間近に迫ってきた。そこまでに1年生チームは、どんなところをブラッシュアップしていくのか。
「基本的には今までいっしょにやってきたメンバーが主体になりますので、結束力、チームワーク、戦術をより強めていくことがメインになりますね。そのうえでヴェルディらしさを出していければと思っていますので、そのあたりのブラッシュアップを考えています」
“ヴェルディらしさ”とは、どういうことなのか。具体的に表してもらった。
「チームワークと似ている部分ではありますが、今のヴェルディは総合クラブで多種の競技、いろんな文化を持っています。TOKYO VERDY.EXEは、そういったクラブに属するチーム。戦術面などの話し合いにおいてもひとりの意見だけでなく、みんなが意見を出し合ってみんなで決めていく。そういったところが、ヴェルディらしさですね」
TOKYO VERDY.EXEのメンバーの半数は、前所属チームでいっしょにプレーしていた。それゆえに、選手間の連携は図れている。
「そうですね。そこを、より強く出していけるようにしたい。戦術的な部分もそうですし、コート上のパフォーマンスもそう。いろんな部分にそういったところを表して、みんなで一丸になっている姿を打ち出していければと考えています」
短期的な目標は、強いチームを作り上げて優勝すること。そして中長期的には、より大きな目標を掲げる。
「まずはTOKYO VERDY.EXEから、日本代表選手を出すこと。チームとしては、それが大きな目標のひとつです。あとは3x3の女子チームに限った話ではありませんが、このヴェルディクラブに3x3の男女チームだけではなく、5人制にパラ、デフとすべてのバスケットボールを総合的に集める。ヴェルディに来れば男女問わず3x3をはじめ、あらゆるバスケットボールができる。そういったチームであり、クラブにしていくことが最終的な目標です」
初年度になる女子のチームの注目点を問うと、強気な答えが返ってきた。
「強いチームですのでチームワークの部分や、そのなかで一瞬光る個人技。そういったところを、見ていただきたいですね。私たちとしてもチームにはほぼ期待しかなく、シーズン開幕をわくわくした気持ちで待っている状況です」
強力なロスターの顔ぶれを見ると、1年目から王者の風格を漂わせそうな雰囲気がある。TOKYO VERDY.EXEは、自信に違わぬ結果を残せるか。大いに注目したい。
(Text by カワサキマサシ)
TEAM information
Team:TOKYO VERDY.EXE
(トウキョウ ヴェルディ エグゼ)
Category:WOMEN
Hometown:東京都千代田区
Since:2024