3x3.EXE PREMIER JAPANには今季、男女あわせて8チームが新規参入します。本企画は新規参入チームのオーナーに参入の背景、クラブが目指すものなどを語ってもらい、新たに3x3.EXE PREMIER JAPANに加わる仲間を紹介するシリーズ連載です。

第6回は、MEN’S CATEGORYに新規参入するMP3.EXE。オーナーの夏 達維(なつ たつゆき)氏は、3x3.EXE PREMIERが始まった2014年から参戦し続ける皆勤賞の男。彼として、そしてリーグとしても10シーズン目という節目に自らチームを立ち上げるという選択を取った彼の、ありったけの思いをここに記します。

ブランド拡大、次世代への貢献、新たな挑戦。
MP3.EXEを通じて実現したい、それぞれの想い

3x3.EXE PREMIERが2014年にスタートして以来、これまで800名弱の選手が参戦してきたが、皆勤賞はたったの3人だけ。「夏さんは、その中の1人ですよ」と伝えると、彼自身もこの「10シーズン目」を迎えることを、1つの目標にしていたという。

夏「僕は”部活に入らなかったけど、プロバスケ選手になる”と目指し続け、バスケットをしてきた人間です。とはいえ現実は甘くなかった。昔はBリーグもありませんでしたし。「もう無理かな……」と諦めかけていた2014年に、3x3.EXE PREMIERができて、初めてプロになれたんですよね。さらに3x3での活躍を見てくださって、5人制でもプロになれました。そんな経緯があったので、2020年に5人制を引退したときも「3x3だけは辞めたくない」と思っていました」

とはいえ夏氏は、”部活に入らずにプロになってしまった”が故に、悩んだこともあったという。

夏「”部活に入らずプロになる”という夢は叶えましたし、コロナで大変だったので(5人制も3人制も一緒に)辞めようかと思ったことも正直あったんです。ただ、それでもオファーしてくれるチームがあったり、PREMIERを目指す若い選手が相談をしてきてくれることも多くて。 求められているのに、中途半端な気持ちでやるのは失礼だと思い、もう一度本気で向き合おうと考えた結果「夏をチームの中心に考えている」とオファーをくれたFUKUYAMA BATS.EXEで去年はプレーさせていただきました。プレーして「意外とまだまだやれるな」と自信もつきましたし「ここまで来たら10年やりきりたい」と思えた。かつ「人生の経験として、チームを持ってみたい」とも思い始めていたんです」

FUKUYAMA BATS.EXEにて中心選手として活躍した2022シーズンの夏氏

2023シーズンは『MP3.EXE』のチームオーナー兼選手としてプレーする道を選んだ夏氏。「MP3はどんなチームにしたいか?」という質問に、夏氏は過去を振り返りながら言葉を紡ぐ。

夏「MP3.EXEは、プロ意識の高いチームにしたいです。僕が考える”プロ意識”は、お金を出してくれるスポンサーさん、運営をしてくれるスタッフの方々など、色んな人の助けで競技ができていることに感謝できたり、日頃から善い行いができること。そんなチームにしたい。

僕のキャリアで言うと、ZETHREE ISHIKAWA.EXEは僕を競技面でも人間的にも一番成長させてくれたチームです。OSAKA DIME.EXEは圧倒的にプロ意識が高かったですし、5人制のトップクラスの選手とも練習する機会があり、凄く良い経験をさせてもらえた。直近のFUKUYAMA BATS.EXEは「もう一回バスケしよう」と思わせてくれたチームなので特別な感情があります。プロ意識をはじめ、これまでのキャリアで経験したことを全てMP3.EXEには集約させたい」

プロのバスケットボール選手としてキャリアを歩んできただけに、オーナー業は夏氏にとって初めてのこと。そこに対する不安はなかったかと聞くと、晴れやかに答えた。

夏「部活に入らなくてもプロになれましたし、普段僕は営業の仕事をしているんですが「営業未経験だけど新人の歴代1位を取る」と目標を持ったら歴代1位になれた。プロになったときも営業で1位になったときも、共通しているのは覚悟だけなんです。質とかではなくて量をこなせば達成できるんです。大変が当たり前と思えば乗り越えられる。だから今回「夏さんのチーム微妙だったね」と言われたくないですし、やっぱり「夏さん凄い」って言われたい。そのために、勝利にこだわることはもちろんですが、スポンサーになってくださった企業様には、そこの社員になったつもりでPR方法までしっかり考えて提案する。それくらいプロ意識を持ったチームじゃないといけないと思っているんです」

発表されたチームロゴ ©3x3.EXE PREMIER

話が少し逸れるが、話題にもなった通り『MP3.EXE』は夏氏が立ち上げたチームではなく、夏氏が引き受けたチームである。この経緯についてもフランクに話してくれた。

夏「名前の通り、Bリーグの群馬クレインサンダーズで活躍するマイケル・パーカーが立ち上げたチームです。彼と僕は2014年にNBLの和歌山トライアンズ(旧パナソニック)で初めて会って、連絡を取り合っていたんですよ。そんな折、パーカーと僕の共通の知り合いが運営している『MP3 Larks』という、つくばみらい市を拠点としたバスケスクール・ユースチームがあるのですが、さらにその上にトップチームを創ろうという話で、MP3.EXEは立ち上がったんです。ただ、パーカーは諸事情でオーナーができないことになってしまい、僕に「チーム運営をお願い出来ないか」と声をかけてくれた形です。僕自身もチームを持ってみたいとは思っていましたし、これも何かのキッカケと思って「やらせて」と彼にお願いをして、現在はスポンサー集めから何までやっている状態です。もう、キャパオーバーですよ(笑)」

冗談交じりではあるが、これまでの話を聞いていても、夏氏は何事も絶対に中途半端で終わらせることはないだろう。「3x3のチームを持ったことで、どんなことをしたいか?」と聞けば、ここでも言葉の節々にプロ意識を感じさせた。

夏「僕がオーナーとはいえ、MP3.EXEは3人の思いや利害が一致したからこそ誕生したチームです。パーカーは自分のブランドを盛り上げたい。共通の知人はスクールの上にトップチームがあることで、子どもたちの目標を創りたい、つくばみらい市にバスケを広めたい。僕はセルフブランディングしたいしプレイヤーとしてレベルアップしたい。そんな3人の思いがチームにはあるんです。だからチームは良い方向に向かわないといけない。

僕自身はとにかく、好きなことをやり続けたいんです。競技を辞めた後に好きなことができていないアスリートって多くはない。だから僕は、競技者である今だからこそ、好きなことを継続してチャレンジすることで、引退したあとでも現役時代と同じくらい注目してもらえるような人間になりたいんです。とにかく今は、もっともっと自分に価値をつけたいですし、今回新しく「チームオーナー」という価値も付けられたので、気持ち新たに、引き締まる思いがあります」

終身雇用の時代ではなく、個人の力が試される現代。だからこそ夏氏は自己ブランディングを大切にしている。肩書だけを欲しているわけではない。

夏「僕は正直”夢を持つ”ことよりも「いま幸せですか?」と聞かれて「幸せ」と即答できれば良いと思っているんです。僕自身は色んなことにチャレンジすることに幸せを感じるタイプなので、行動し続けるだけなんです。まぁ、たまにゴールが見えなさ過ぎて疲れるときもあるんですけどね(笑)でも、明日死ぬってなってしまっても後悔が無いように生きていたい」

今回のMP3.EXEは、間違いなく夏氏にとって新たなチャレンジである。突如舞い込んできたチャンスをしっかり活かすために、自身のキャリアをより輝かせるために。

夏「いま、一部のBリーグの選手から気にしてもらってるんです。引退した後も、選手時代と同じように僕がラジオに出たり多方面で露出しているので「どうしたらそうなれるのか?」と、相談いただくことも多いんです。セカンドキャリアなどの面でも、こんな生き方があるって伝えたいですし、良い意味でバスケだけじゃないってことも若い選手には知ってほしい。

積み重ねてきたことが、ようやく多方面で還元できるようになってきていますが、まだまだです。好きなことを継続している姿をもっと見せないといけない。ちなみに、今年の8月に本を出版するんです。20年越しに夢を叶えられたので、本当に嬉しい。これもPREMIERでプロになれたからできたことだと思います。リーグに感謝しつつ、また一歩、僕は僕の目標に向かって挑戦するだけです」

先日、初めてスポンサー候補の某企業を訪問した際、「飼っている豚がTik Tokでバズっているんですが、一緒になにかやりませんか?」とユニークな提案をし、快諾に至ったそう。また1つ実績を創った彼だが、恐らく今後もバスケをはじめ、キャリアの創り方等々、多くの相談が彼には多く寄せられるだろう。挑戦が信頼に代わっている証拠だと思う。

“中途半端は大嫌い”と、取材中にも語ってくれた彼のことだから、MP3.EXEは注目しないわけにはいかない。一通りの話を聞いた上で思うのは、今年の夏は彼にとって、例年以上にアツくなりそう、ということだ。

◤TEAM information◢
Team:MP3.EXE
Since:2023
Hometown:茨城県つくばみらい市
SNS:
(Twitter)https://twitter.com/MP3_3X3
(Instagram)https://www.instagram.com/mp3exe/

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詳細:https://3x3exe.com/premier/team-owner/
問合せ先:premier@exebasketball.com

(Text by 小林 亘)