3x3.EXE PREMIER JAPANには今季、男女あわせて8チームが新規参入します。本企画は新規参入チームのオーナーに参入の背景、クラブが目指すものなどを語ってもらい、新たに3x3.EXE PREMIER JAPANに加わる仲間を紹介するシリーズ連載です。
最終回となる第8回は、MEN’S CATEGORYに新規参入するLAST ONE FUKUOKA.EXE。彼らのスタートは、福岡に3x3チームが無くなるという事実を受け入れるところからでした。

手を上げてくれる人を待つのではなく、
自ら手を上げた仲間たちと共に。

FUKUOKA YUWA MONSTERS.EXEは、2021年に新規参入した新チームでありながら、その1年後である2022年5月、運営会社の諸事情により消滅してしまった。開幕直前の発表ということもあり、リーグはチーム数を純減にはできないと判断し、1年間という期限付きでリーグが運営するチーム『FUKUOKA.EXE』を誕生させ、2022シーズンの幕を明けることとした。ただチームに目線を移すと、2022シーズンが終わってしまえば、同じくしてチーム完全消滅という、決して明るくない1年の始まりを意味した。
このFUKUOKA.EXEの状況を見て「福岡県のプロ3x3チームの火を消してはいけない」と立ち上がったのが『LAST ONE FUKUOKA.EXE』であり、オーナーの青野玄 氏である。

青野:「私は元々EXPLORERS KAGOSHIMA.EXEの取締役の1人で、3x3やPREMIERとの接点は7~8年ほどあったんです。そして私がチームを離れることになった2022年の5月末頃、ちょうどFUKUOKA.EXEの話を聞きました。
最初は後方支援と言いますか、福岡のチームがなくなるのは惜しいと思い「できることはやろう」という気持ちだったんです。ただ、徐々にアンバサダーのU-LAWやFUKUOKA.EXEの選手たちと話す機会が増え、2023年以降もチームを継続するための議論にも参加し始めたんです。「どうしたら福岡の3x3チームを存続できるか」と。時間が無い中で何度も話し合った結果「引継ぎ先を探すよりも、自分たちでやろう」という結論に至り、『LAST ONE FUKUOKA.EXE』を立ち上げに至りました」

3x3.EXE PREMIERのシーズンは5月~9月。青野氏が自分たちでチームを立ち上げると決めたのは8月~9月にかけてで、ちょうどシーズンが終わる頃だった。

青野:「「3x3に限らず、バスケで福岡を盛り上げる活動はしたい」と、常々U-LAWとは話していたんです。アイデアベースですけど「こういうの良いよね」と。そんな話をしていくと、だんだん自分たちでやろうって覚悟が出来てきたんです。
そして、チームを継続するための議論に参加していたメンバーを有志として集めて、チームを運営するための会社として株式会社STILLを立ち上げました。でも本当に急遽「やろう」という話になったので、チーム運営の経験があるとはいえ、今もギリギリです。その中でも、期限ギリギリまでみんなと話し合いながら、なんとか形にして走り続けていますね」


時間がない中でも、チーム名や会社名、ロゴに関しては、有志で集まったメンバーやFUKUOKA.EXEのメンバーと何度も話し合いを行い、決して妥協をすることはなかったと青野氏は語る。

青野:「会社名の『STILL』は『Still Go On(今もずっと続く)』という意味を込めて、様々な角度から僕らを見たときに相応しいと思い付けました。残念ながらFUKUOKA YUWA MONSTERS.EXEは無くなってしまったけれど、福岡の地で末永く3x3をやっていきたいという気持ちや、福岡のバスケの歴史を背負っていこうという思いで社名にしました。
また、チーム名はU-LAWがやっている「LAST ONE」というオリジナルの大会をベースにしたんですが「最後まで立っている人が勝ち」という意味を込めています。ゲームの展開次第では「もう勝てない」という試合もあると思うんですけれど、だからと言って諦めない。最後まで戦い続ける姿勢をチームのカルチャーにしたいという思いで、チーム名にしました」

ロゴの中には福岡県の市外局番である「92」も入れられた。このように細部までこだわるのは、STILLのメンバーの福岡愛が強い証だとも思う。

青野:「ほかの地域はわからないですが、福岡出身の人は地元愛が大きいんですよ。我々もその一人と言いますか。福岡はバスケ王国の1つとも言われていて伸びしろも大きい。そんな中で3x3のプロチームができたのに無くなってしまうのは本当に勿体ないと思ったんです。
また、協会さん含めて各年代が努力しているものの、まだまだ高校年代までの活躍が目立つ地域で、大学以降は福岡から出て行ってしまう選手も多い。Bリーグにライジングゼファー福岡がありますが、全員がそこに戻ってくるわけではない。それであれば、私たちが1つの選択肢にもなれると思うんです。最終的には福岡全体のバスケシーンに役立てれば、これ以上ないと思っています」




青野氏が語るように、高校バスケット界を見ると、福岡には「福岡第一」「福大大濠」という全国屈指の強豪校がある。ただ、この2校が全てではない。どの都道府県でも言えることだが、福岡県にも沢山の原石が眠っている。

青野:「福岡が拠点ですので、チーム作りにおいてもある程度は福岡に来れるような選手を獲得したいです。第一や大濠を選ばなかった、学生時代にくすぶっていた選手でも、例えばトライアウトでチャンスを掴むかもしれませんよね。OPENな場所を設けることで、福岡のバスケットを盛り上げたいですし、多くの人にチャンスを掴んでもらいたいし、活動を通じて福岡県に貢献していきたい。
ちなみに福岡には本当にポテンシャルの高い選手が揃っているので、ある程度エリアを絞って選考したとしても、それが大きなハードルになるとは考えていません。やってみないとわからないですし、可能性は大きいとも感じています」

バスケ王国・福岡だからこそ成せる技、とも筆者は思ってしまう一方で、言葉の節々に原石の可能性を強く信じ続けている青野氏の、人や地域に対する想いの強さを感じた。

青野:「LAST ONE FUKUOKA.EXEは「大会で結果を残す」「裾野を広げる活動をする」「若手を育てる」の3つの考え方を軸に『FOR FUKUOKA , TO THE WORLD』というコンセプトで活動をしていきます。
活動としては、まずトップチームは成績を残して世界へ挑戦し福岡に貢献することが1つ。また、バスケをやったことがない子どもたちに、小さなゴールを使った体験会を企画したり、ピックアップゲームやフリースロー大会をして裾野を広げていきたい。さらに、ウチの選手たちが小中学生のクラブチームに対して、無料のバスケクリニックを開くことも考えています。加えて、魅せるバスケとしてフリースタイルのバスケチームも持っています。バスケの中で得意分野を伸ばせるような場所を提供し活動を続けていけば、それぞれが相乗効果で広がっていくと、私は信じています」


青野氏はチーム運営の経験もさることながら、音楽フェスなどイベント関連の仕事も手がけてきた実績がある。今後どのような融合があるか個人的には楽しみであるが、目標について伺えば、青野氏は足元をしっかりと見つめて話してくれた。

青野:「トップチームが活躍し、裾野を広げる活動を続け、学生に対して技術指導をする。この3つのボリュームを少しずつ大きくしていくことが、まずは優先的です。そしてチームが成長していく過程で、たくさんのオファーをいただけるようにしていくこと。それが全部できれば、知名度やブランドを上げることにも繋がると思いますし、福岡全体のレベルアップやトップチームの結果にも繋がってくると思うんです。
とはいえ、私自身にチーム運営経験があるとはいえ、実績も何もない中、かつ準備期間も短い中で「目標を余裕でクリアしている」なんてことは全くありません。2年目で、1年目の実績を語れるように、今年は頑張っていきたい」

半分余談になってしまうが、特にアンダーカテゴリーを中心に福岡のバスケットは盛り上がっていることで、福岡県そのものがバスケットボールという競技に対して前向きであり、LAST ONE FUKUOKA.EXEの活動においても追い風ではないか?と、直球で最後に聞いてみた。

青野:「もちろんバスケ畑の人から見るとバスケ王国って言われますが、福岡という街で見ると明らかにNPBソフトバンク・ホークスが一強なんですよ。プロ野球全体でもソフトバンクファンの熱狂は凄いって話題です。もちろんJリーグのアビスパ福岡やBリーグのライジングゼファー福岡とかもあるんですが、ホークスさんは本当に凄い。比べたらまだまだですけれど、将来的にはソフトバンクのように街から応援されるチームになっていきたいですね。
そのためにも、お伝えした3つの軸をしっかり注力していかなければなりません。トップチームは成績を残す。育成年代への無料指導も出来る限りやる。バスケに触れたことのない低学年を中心に大人まで幅広く、裾野を広げ生涯スポーツとしてバスケを提案するために、イベントを定期開催する。この3つをとにかく徹底して、より福岡のバスケットを盛り上げていきたいです」

「盛り上げたい」。言葉にすると軽く聞こえてしまうかもしれないが、LAST ONE FUKUOKA.EXEにとっては、想像以上の覚悟があったに違いない。かつ、1人の覚悟ではない。野球より、サッカーよりもバスケ。そんな文化と盛り上がりが福岡に根付く日に向かって、同じ志と覚悟を持った仲間たちの挑戦は、もう既に始まっている

[左]青野氏、[右]U-LAW氏


◤TEAM information◢
Team:LAST ONE FUKUOKA.EXE
Since:2023
Hometown:福岡県福岡市
HP:https://lastone-fukuoka.com/
SNS:
(Twitter)https://twitter.com/lastone_fukuoka
(Instagram)https://www.instagram.com/lastone_fukuoka/

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(Text by 小林 亘)