3x3.EXE PREMIER JAPANには今季、男女あわせて8チームが新規参入します。本企画は新規参入チームのオーナーに参入の背景、クラブが目指すものなどを語ってもらい、新たに3x3.EXE PREMIER JAPANに加わる仲間を紹介するシリーズ連載です。
第5回は、MEN’S CATEGORYに新規参入するBRIDGE LINE.EXE。共同オーナー2人(荒武直樹氏、須田義龍氏)は、そもそもの”プロ”という概念に疑問を持っていたんだとか。

“プロ”としての在り方とは何か。
模索した先に見つけた新規参入の、さらに次を見据えて、今。

BRIDGE LINE.EXEは不動産業に従事する荒武直樹氏と、家族経営の事業を営む須田義龍氏が共同オーナーとなって、東京都板橋区成増をホームとして設立された。2人の共通項は、ともにバスケットボールプレーヤーであること。須田氏は2021年に、CHOFU SHEEP.EXEに所属していたこともある。
彼らは社会人になってから競技を通じて知り合ったそうだが、出会った瞬間から意気投合したわけではなく、当初は少し距離を置き合う関係だったという。

荒武「バスケット界は狭くて、社会人になってもプレーを続けていると、同じ地域の選手ってみんな知っているんですよ。須田さんも最初はそのひとりで、徐々に一緒に練習したり、試合に出るようになりました。最初から気が合ったわけではなくて私はたぶん、嫌われていたんじゃないかな。お酒を飲むし、うるさいので(笑)」

須田「あはは(笑)でも確かに、最初はあまり仲が良くなかったです(笑)バスケットをやっていると、どうしてもプレーやバスケ界の話が多いんですが、僕はそういうのが苦手で。かつ、業界的にも、同じレベルのプレイヤーだったら付き合うとか。僕はあくまで『人として付き合いたい』と考えているので、荒武と打ち解けるにも時間がかかりましたね」

そんな2人が徐々に距離を近づけていったのは、”プロの在り方”について共感したことが、非常に大きなキッカケになったという。

荒武「プロになれる人は、本当に一握りだと思うんです。それにバスケ界全体を見渡せば、プロにはなれないけれど、バスケットを続けている人って本当に多いじゃないですか。もっと言えば定職に就かずとにかくバスケットをプレーする人もいる。『その状態って、本当に健全なんだろうか?』と、私はモヤモヤしていたんですよ。そんな話を須田さんにしたところ同じように考えていたようで、そこからご飯を食べたりお酒を飲むようになっていったんです」

共同オーナーの2人 【左:荒武直樹氏、右:須田義龍氏】@チームより提供

その話題の中では『3x3.EXE PREMIER』という新しいプロとしての形ができたことも挙がった。2人は「こういうプロの形があってもいいよね」と共感したそう。

荒武「何をもってプロなのか。その判断軸として、別の職業を持ちながらプロ選手としての活動を推奨する3x3.EXE PREMIERの考え方や理念に、2人とも賛同したんです。デュアルキャリアを推奨するリーグの在り方、またチームを持つにしても経営的にも小規模の資金でできること。魅力に感じましたね」

須田「私は過去に3x3 .EXE PREMIERのチームとの契約やUSA semi pro league ABAのチームにも参加していた事もあり、プロ活動とは何かを自分の中でやってきました。その後も”プロ”としての在り方を考えながら、地域の方々になにか還元できないか、バスケットボールで皆様が盛り上がれることのお手伝いができないか、という思いがありました」

アプローチは違えど、3x3.EXE PREMIERを通じて2人はますます距離を縮めた。そして約2年前から「僕らでチームを作ろう」と構想を練っていたそう。2023シーズンの新規参入は、2人にとってようやく実現した1つの理想だったのだ。

須田「3x3の認知はまだ低い現状ですが、地域の方々や企業など各方面に説明をすると、みなさんかなり飛びついてきてくれました。これを形にすれば注目され、地域活性化につながるのではないか。そういった考えがパートナーである荒武とも合致したので、本腰を入れてスタートしました」

左:荒武氏、右:須田氏 @チームより提供

“プロ”の在り方を模索しながら、地域への貢献の形を考えながら。BRIDGE LINE.EXEが目指すのは、まずは地域活性化であり、そこに暮す人々、子どもたちへのバスケットボールを通じた還元。

須田「チームの立ち上げに際して色々な人と話をすると、バスケットをやっていない方でも「3x3は詳しくないけど興味はすごくある」など、関心を持っていただける方が幅広くいらっしゃったんですよ。ですから競技者目線よりも、一般の方たちが何を求めているのかに注目して広げていくことが、我々の目指すものにつながる。それはつまり、地域の子どもたちになにかを還元して、それをつなげていくこと。そこが私と荒武が共通しているところで、そういう方向性で活動していこうとなりました。」

須田氏はPREMIERでプレーしていたことも相まって、外国籍選手とのつながりが非常に多いそう。日頃から一緒に時間を過ごすこともあるそうで、それが地域貢献にも活かせると考えている。

須田「私には小学生の子どもが2人いるのですが、幼少期から外国籍選手と触れ合っていることもあって、外国人の方に対して抵抗も物珍しさもないんです。英語に対してもそう。これって非常に良いことだと思うんです。
地域の子どもたちも、同じ街で普通に暮している外国籍選手と会ったら『あ、●●選手だ』と国籍関係なくフレンドリーに話せるようにしたい。子どもたちが様々な人と交流を持つことにより、世界的な視点を持ち、彼ら・彼女たちのより大きな活動、成長につながる場を設けていきたいと考えています」

外国籍選手を獲得が、チームの強化だけではなく地域貢献にもつながる。この視点は須田氏の経験から来るものに違いない。かくして外国籍選手も積極的に取り入れたチーム作りを行う方針であり、またBRIDGE LINE.EXEの運営は、クラブのマネジメント面を荒武氏、チームの現場は須田氏が受け持つと、役割を分担して行う。

荒武「私が資金管理や会計などをやります。もちろんバスケット経験者ではあるので、獲得に際して『この選手、いいよね』といったことがあれば競技面も見ます。運営面は私がやっていますが、須田さんはいろいろと提案を持ってきてくれるので、イベントなども話し合いながら進めていきます」

「ちょっと、補足として」と荒武氏が続ける。

荒武「僕らはバスケットだけではなく、スポーツを使った地域振興をしていきたいと考えています。ほかの競技にも知り合いがたくさんいて、たとえば第一線で活躍していた体操の日本代表コーチとか、バスケット以外のスポーツをしてきた方たちから学べることも多いと思います。そのような大きな枠で捉えて、地域の方々へ還元していきたい」

地域活動も積極的 @チームより提供

参入1年目は当然のことながら、チームを形作るところから始めねばならない。しかしBRIDGE LINE.EXEは、実績や能力を基準にした選手獲得は行わない。

須田「選手、スタッフも含めて、私と荒武の理念に沿った選手を集めていきます。プロとしての在り方や、地域貢献の考え方に賛同してくれる選手とスタッフとで、競技含めて何においても楽しんで活動をしたい。それが1年目の一番の目標ですね」

勝負事であるゆえ結果にはこだわるが、決してそれが第一主義ではない。勝敗を越えたところにある価値も求める。

須田「獲得する選手のレベルはしっかりと見極めますし、こだわるところです。とくに外国籍選手は、プロ意識がすごくハッキリしています。彼らに『ファンや、スポンサーさんが喜ぶことは?』と問いかけると『勝つこと。プロチーム、プロ選手なのだから、勝つことが最大の恩返し』という認識を、ほとんどの選手が持っています。それに加えて選手の人間性も求めているところです。勝敗にはこだわりつつ、一方ではそういったレベルの話ではない選手たちを集めていきます」

昭和の時代は全国的に、多くの子どもがプロ野球の読売ジャイアンツに夢中になった。BRIDGE LINE.EXEは、今とこれからを生きる板橋区成増の子どもたちに、昭和のジャイアンツと同じ熱量で憧れられられるローカルヒーローであることも目指すべき姿かもしれない。

荒武「ジュニアのクラブがたくさんできているとはいえ、青年・少年スポーツの中心はまだ部活だと思っています。部活を頑張っている子たちに、10年後にはBRIDGE LINE.EXEに入りたいと思ってもらえる存在でありたい。今、競技人口は5人制のほうが圧倒的に多く、かつ盛り上がりも凄いですよね。ですが5人制と3x3は、スキルや頭の使い方もかなり違うんです。子どもたちに早めに3x3に触れてもらって、いずれは地元の板橋区成増にあるBRIDGE LINE.EXEに入ってくる。そうなっていたいですね」

BRIDGE LINE.EXEの活動を通じて目指すのは、地域の子どもたちの育成だけに留まらない。

荒武「地元の商店街も、育てていきたいんですよね。だけど商店街にはチェーン店が多すぎて、オーナーにたどり着かないこともあるんです。本拠地の成増駅には大きな商店街が3つあるのですが、ほとんどがチェーン店だったりします。これは私の主観かもしれませんが、バスケットをする人は結構お酒を飲むんですよ(笑)。いずれはホームゲームをやって、お酒を飲みに地元の飲食店へという流れを作れればいいですね。そのようにお店と上手くコラボレーションができたときの還元って、かなり大きいと思うんです。商店街をBRIDGE LINE.EXEと一緒に盛り上げていけたら、この上ないことかもしれません。子どもたちを育てていくプラス、その結果として商店街もどんどん元気になっていく。それも、目標の1つですね」

地域の将来の宝である子どもたちを育て、そして地元の人々が集う商店街に活気を。果たすべき未来予想図を描いて、BRIDGE LINE.EXEは今、走り始めた。

@チームより提供

◤TEAM information◢
Team:BRIDGE LINE.EXE
Since:2023
Hometown:東京都板橋区成増
SNS:
(Instagram)https://www.instagram.com/bridge.line_/

◤新規参入に関するお問合せはこちら◢
premier@exebasketball.com

(Text by カワサキ マサシ)