コマが回転する様子をモチーフにした個性的なチームエンブレムを胸に、今シーズンから参戦を開始する。それが神奈川県伊勢原市を中心に厚木市、秦野市も含めてホームとする、SPINNERS.EXEだ。なぜ、エンブレムのモチーフをコマにしたのか。オーナーの松尾正太氏が、その理由を語る。

SPINNERS.EXE エンブレム
SPINNERS.EXE ロゴ

「伊勢原を象徴するもののひとつに、大山こまがあるんです。紐を巻いて回すあの、コマです。地域の人はだれもが知っているもので、伊勢原の子どもなら小学生のころに地元で大会があったりして、必ず大山こまを回す体験をしています。エンブレムも朱・紫・藍の大山こまの色合いに沿わせているので、伊勢原の人ならみんなピンとくるものだと思うんです」

松尾オーナーは小さなころからさまざまなスポーツを経験していて、地域のコミュニティと関わった思い出が、SPINNERS.EXEを立ち上げる遠因になった。

「私は新潟県の出身で、小さいころに通っていた剣道場がすごく楽しかったんですよ。指導してくれる大人たちがみんな優しくて、道場は温かい雰囲気でした。ぼんやりとかもしれませんが、あれが自分にとっての原体験ですね。僕が体験したように、地域に根ざした場所でスポーツに触れられる環境があることは大事だと思うんです」

スポーツと地域との密着は、Jリーグが発足した1990年代あたりから、スポーツクラブのテーマとして掲げられるようになってきた。実際に地元にスポーツクラブがある地域では、それが形を成してきている場所もある。自身の現在の居住地である伊勢原市のエリアに、そういったものを作りたい。それが松尾オーナーを3x3.EXE PREMIER参戦へと向かわせた、大きな動機である。

「チームの設立にあたっては、私は長くスポーツ業界で仕事をしていまして、ビジネス面で以前から3x3には可能性があると感じていたことがひとつ。ふたつ目は地域密着型のスポーツクラブの存在は、その地域のためになるはずだと信じていることです」

「それとも関わりますが」と続けて語る3つ目の思いが、チーム設立の核になる要点だ。

「大学生のころに、スポーツに関わることで海外を体験しました。そこではスポーツが、地域の日常にあったんですよ。老若男女がバスケットボールやサッカー、ラグビーをやっている。それでゲームが終わったら施設にあるラウンジなんかで、その日の自分たちの試合結果やプレーの内容を肴に、お酒を飲みながら話しているんです。すごく素敵だなと思いましたし、このようにスポーツが街の日常にある文化を作りたいという思いが湧いてきました」

大学生のころに湧き上がってきた思いは、胸のなかからずっと消えることはなかった。あれから時間を経てスポーツを取り巻く日本の文化も変化しつつあるが、地域密着が定着しているとは松尾オーナーの目に映ってはいなかった。

「スポーツの地域密着がキーだという思いは、ずっと変わりませんでした。同じ意見を持つ人も少なくないとは思いますが、だれも始めませんし、だれかが変えてくれると思っているのかもしれません。そういうことにチャレンジする会社や、リーダーもいない。だったらもう、自分でやるしかないなという思いに至りました。ないから諦めるのではなく、ないものは作るの精神ですね」

髙山松太郎伊勢崎市長表敬訪問の様子©SPINNERS.EXE

選手はホームタウンに縁のある者を中心にピックアップした。それはもちろん、地域密着の考えに根差してのものだ。

「3x3.EXE PREMIERのロスターの1/3くらいは違うところの出身者ですが、練習生を含めると半分くらいがホームタウンエリアに縁がある選手たちです。なので地元出身者は、かなり多いと思います。練習生も3x3.EXE PREMIERには出られなくても、ほかのリーグの試合には出場します。18歳とか若い選手もたくさんいまして、今後は中学生や高校生も育てたいと思っていますので、そういう活動も並行してやっていきたいですね」

結成されたばかりのチームは、3x3.EXE PREMIERの開幕に向けて日々、練習に取り組んでいる。

「性格のいい選手たちが集まっているので、そういう点ではとても雰囲気はいいですね。でもその反面、ガツガツしたというか、もっと熱量が表に現れるようになってきてほしい。そのことはチームにも話していますが、私は細かい技術指導みたいなことに関してはあまり口を出さないことにしています。全体的には大人しめというか、派手めじゃない選手たちが多いですね。でも、地元で評判のイケメンがいるんですよ」

ここでSPINNERS.EXEの注目選手を紹介しよう。まずはキャプテンを務める柳川和輝。彼は伊勢原市出身で、地元でも上手いと評判の選手だったという。小久保眞。彼はBリーグでのプレー経験がある42歳のレジェンドプレーヤーで、年齢関係なく頑張る姿に松尾オーナーは感銘を受けているという。そしてオーナーの口から出た地元で評判のイケメンとは、厚木市出身の梅林滉樹。関東学院大出身で、昨季までTACHIKAWA DICE.EXEでプレーした。ルックスはオーナーの言葉通り、さわやか系のイケメンだ。

#87 柳川 和輝©SPINNERS.EXE
#6 小久保 眞©SPINNERS.EXE
#33 梅林 滉樹©SPINNERS.EXE

「地元出身の選手がいれば、応援の熱も違うと思うんですよ。『あの選手、伊勢原市の●●くんだよね』とか『厚木商高の●●くんだよね』と、そういう感じで本当に地域に密着したチームを作りたいと思っていたんです。近所のおばちゃんが自慢したくなる、地元の選手って感じですよね。『3軒隣の柳川くんって今、プロのバスケ選手らしいよ』とか、そんなイメージのチームにしたいなと思っているんです」

できたばかりのチームゆえ、思うような結果が出ないかもしれない。それも折り込んだうえで、初年度はチームの哲学に共感した選手たちとともに、地盤を固めていく。

小中学生向けクリニック©SPINNERS.EXE

「地域密着型スポーツで地元のアイコンになることを目指すうえで、地元で活躍していた選手を優先的に獲得するのは必須だと思っていました。内面も品行方正を求めるのはもちろん、バスケットを通じて世の中の役に立ちたいとの考えを持っている選手を選びました。実力より先にと言うと語弊がありますが、そういったところを重視しましたので、今シーズンは戦いの面では、ちょっと苦戦するかもしれないと覚悟はしています」

3x3.EXE PREMIERには、国内屈指の強豪がずらりと集う。1年生チームはそんな猛者たちを相手に、どんな戦いを挑むのか。

4月7日海老名市内でのイベントの様子©SPINNERS.EXE

「まずは、しっかりとディフェンスをする。我々には外国籍選手はいませんから、とにかくディフェンスはハードに。そこの手を抜いたら即、ボコボコにされるでしょう。だから、ディフェンスは大前提ですね。そうやって泥臭くてもいいから、ロースコアの戦いに持ち込む。オフェンスはどちらかというとスピーディーに展開して、2ポイントを多投できるようにしたい。言うならば、日本代表みたいなやり方ですよね。あくまでも、チャレンジャーとしての戦い方をする。それが今季の、SPINNERS.EXEの方針です」

今はまだ大人しい選手たちがシーズンが開幕すれば全力で身体を張り、ときにヒザを擦りむきながらでも必死に相手に食らい付いて、闘志をむき出しにして戦う。そんな姿を見せられれば伊勢原市、厚木市、秦野市の人々の心に刺さることだろう。それがSPINNERS.EXEが設立の主意としたホームタウンに密着するために、地域の日常にスポーツがある文化を作るための第一歩になることだろう。

(Text by カワサキマサシ)

TEAM information

Team:SPINNERS.EXE(スピナーズ エグゼ)
Category:MEN
Hometown:神奈川県伊勢原市・厚木市・秦野市
Since:2024