3x3.EXE PREMIER JAPANには今季、男女あわせて8チームが新規参入します。本企画は新規参入チームのオーナーに参入の背景、クラブが目指すものなどを語ってもらい、新たに3x3.EXE PREMIER JAPANに加わる仲間を紹介するシリーズ連載です。
第1回は、WOMEN’S CATEGORYに新規参入するSAKU REGION.EXE。男子チームMINAKAMI TOWN.EXEでプレイヤーとしても活動するオーナーの花野文昭氏が、なぜ地元ではない長野県佐久市に、女子チームを創設したのか

長野県全域の街や人に、恩返しするためのチーム創設
この地に生まれた次世代のバスケットボールプレーヤーたちに未来を

2023シーズンから3x3.EXE PREMIERの女子カテゴリーに新規参入するSAKU REGION.EXE(サク リージョン エグゼ)は、長野県佐久市をホームタウンとする、花野文昭氏と大河内眞弓氏の2人が共同オーナーを務めるチームだ。今回の取材では代表して花野オーナーが、参入への経緯を話してくれた。

花野「長野県には高校までは全国区のチームがあります。ですがそこから先となると、大学バスケで一部リーグに所属している大学も、一部リーグを目指せる大学もありません。女子のカテゴリーでは特にそう。結果的に、高校を卒業して大学で一部リーグへの挑戦や将来的にプロを目指す選手は、ほとんどが県外に出ていってしまう。この現状を変えたかったのが、参入を決めた要因のひとつですね」

県庁所在地の長野市や約24万人の人口がある松本市ではなく、人口約10万人の比較的小さな佐久市をホームタウンとするのも、参入要因だと言う。

花野「どちらかといえば佐久市は、スポーツに対してあまり積極的ではない街でした。人口も減っています。そのなかで地域の活性化や、スポーツ振興に取り組む姿勢を見せたい思いがありました。長野市や松本市はそういったことに強いのですが、佐久市はそうではない。それに松本市には3x3のチームがあり、長野市はBリーグのチームがメインで動いています。佐久市・小諸市・軽井沢方面はチームがなかったので、逆に考えれば今がチャンスだと思い、佐久市でやろうと思って始めました」

写真はチームより提供©SAKU REGION.EXE

花野オーナー自身は新潟県の出身。なぜ長野県のバスケ界の現状を憂い、佐久市でチームを立ち上げるに至ったのか。

花野「僕が高校を卒業したタイミングで、信州ブレイブウォリアーズ(長野市を本拠地に構えるBリーグのチーム)に選手として入団した事がきっかけです。それと同時にプレーしながら、ブレイブウォリアーズのバスケットボールスクールにコーチとして活動していて、子供たちにバスケットを教えていました。その際に指導をしていた場所が、小諸・佐久の地域でした」

その頃からすでに、長野県のバスケットボール界は学年が上がるごとに選手人口が減少する状況だった。

花野「当時からスクール生は、基本的には小・中学生がほとんど。それ以降、高校進学と同時にバスケットをやるか、やらないかの瀬戸際というか、中学卒業後にやめてしまうスクール生もいました。続けたとしても、高校を卒業して今でもまだやっている選手が、あまりいないですね。

先ほどの話に紐づきますが、僕が今まで長野県でバスケットボールをやって・見てきた中で、ずっと「現状を変えたい、長野県のバスケットで未来を見せたい」と思っていました。だから3x3のチームを立ち上げることで、長野県のバスケットボールをもっと盛り上げたいと思いました」

長野市や松本市など、大きな街をホームにしたほうが効率的かと思われるが、あえて佐久にした理由は、ふたりの共同オーナーと地域や街の人々とのつながりが大きいとも語る。

花野「長野は僕のプロキャリアがスタートした場所であり、本当に大変な時期に支えてくれた方々がいる場所でもあります。そして共同オーナーの大河内と同じスクールで出会い、一緒に子供たちにスクールで指導をしていた場所も佐久地域でした。

SAKU REGION.EXEは、佐久地域で知り合った人とのつながりから生まれたチームでもありますから、そんな街や人たちに、恩返ししていきたい。チームがあることで選手たちが長く長野県でバスケットボールをしている姿を地域の方々にお見せできると思いますし、活動を続けていくことがきっと、佐久地域の活性化になるとも考えています」

写真はチームより提供©SAKU REGION.EXE

SAKU REGION.EXEの誕生には、3x3.EXE PREMIERに参戦中のMINAKAMI TOWN.EXEの存在も大きい。花野オーナーは同チームのプレーヤーであり、SAKU REGION.EXE創設に際しては、MINAKAMI TOWN.EXEの大塚俊選手兼オーナーからのアドバイスも得た。

花野「MINAKAMI TOWN.EXEもそうですが「小さな町でなにか地域貢献ができないか」との思いが強いと思います。選手兼オーナーの大塚には「女子のカテゴリーで3x3のチームを作って挑戦したい」と伝えて、いろいろと話を聞かせてもらいました。自分がプレーヤーとして3x3.EXE PREMIERを経験していること、MINAKAMI TOWN.EXEを参考にできることで、効率良くチーム運営ができそうです」

シーズンが始まれば、花野オーナーは選手としてプレーも続ける。男子チームの現役選手であり、女子チームのオーナーとは珍しいパターンの2WAYだ。

花野「そうなんですよ。だから、ちょっとやってみたかったです(笑)。これが男子チームのオーナーだとちょっと難しいかもしれませんが、女子のカテゴリーなら面白いかなと。女子チームに男子の選手がコーチとして関わっているケースは、まだまだ少ないです。僕が知る限り齊藤洋介選手(UTSUNOMIYA BREX.EXE)がコーチをしているTOKYO BB.EXEくらい。僕がコーチという立場になって、女子選手が戦えるステージを作ってあげられたら…という思いもあります」

女子のカテゴリーを選んだ理由について、花野オーナーは続けてこう語る。

花野「共同オーナーの大河内が女子の5人制のクラブチームを持っていて、女子のカテゴリーに顔が広いので人を集めやすいのも理由のひとつです。男子のチーム数に比べて、女子のチーム数はまだまだ多くないですから、良い成績が狙えるチャンスがあると思うんです。もちろんリーグ制覇を目標に活動できるチームになりたい」

メンバーは構成中だが、あくまでも地元・長野の選手を中心にしたいと考えている。

花野「8人の選手を選ぶなかで、現状で5人ほど長野県出身者がいます。あとの3人くらいは県外出身者かな。リーグのプレーヤーリストの中から、2~3人に声をかけさせてもらおうかなと。実業団もやっている、3x3もやっているではなく、完全に3x3がメインの選手を獲得したいですね。そのうえで長野県出身者のチームであり、佐久地域周辺で活動している選手をメインとして戦えればと思います」

写真はチームより提供©SAKU REGION.EXE

まだチームはスタートを切っていないが、花野オーナーの頭のなかには5年後、10年後のSAKU REGION.EXEのあるべき姿が浮かんでいる。

花野「何年後かに男子と同じように女子も42チームくらいに増えたら、もっと面白くなると思っています。なぜそれができないのかを考えると、女子の3x3の認知度はまだまだ低いからだと思う。そういう状況を改善しつつ5年後、10年後にもSAKU REGION.EXEという、長野県で3x3をやっているプロチームが存続していることが目標のひとつ。長野の選手たちに、長く地元でプレーをしてもらえるようにしたいです」

花野氏と共同オーナーの大河内氏は目的や目標を同じにし、ふたりの意思疎通も図られている。

花野「僕自身の思いは、プロキャリアをスタートしたここ長野県で恩返しをしたいというのが始まりです。共同オーナーの大河内は、こうした活動を通じて地域の活性化や、地域の女性スポーツ振興が目的。大河内なりの地域貢献を考えて、チームを運営してくれています。それは共同オーナーとして、僕も同じ気持ちです。この地域の特色を生かしながら活動して、佐久地域の方々とともに戦うつもりでやります。目指す在り方は地域に暮らす人々が“私たちのチーム”と、心から応援できる“完全地域密着型”の女子3x3プロチーム。SAKU REGION.EXEを通じて地域貢献ができて、地域の活性化ができれば成功かなと思っています」

参入1年目のチーム。大きなことは言えないが、確かな信念はある。花野オーナーは最後に、その思いを言葉にした。

花野「僕たちの一番の目標は、地域の人々に愛されるチームになること。つねに試合の結果を求めるのはもちろんで、1年目だとしても3x3.EXE PREMIERのリーグ制覇を目標にして、佐久地域からこんな選手がプロリーグで戦っている、こういう人柄の方たちが戦っているんだということを伝えたい。とにかく真面目な選手たちばかりなので、地域の人たちとともに戦う姿勢を見せられるチームだと思います。応援していただければ、うれしいです」

写真はチームより提供©SAKU REGION.EXE

◤TEAM information◢
Team:SAKU REGION.EXE
Since:2023
Hometown:長野県佐久市
SNS:
(Instagram)https://www.instagram.com/epic.jp/

◤新規参入に関するお問合せはこちら◢
premier@exebasketball.com

(Text by カワサキ マサシ)