YAIZU CITY UNITED.EXEは、2018年にYAIZU GR UNITED.EXEの名称で参戦を開始(2023年より現在のチーム名に改称)。2014年にスタートした3x3.EXE PREMIERのなかでは、初期の時代から参戦している古参チームのひとつである。個人や企業がオーナーとなって参戦するチームが主流のなかで、YAIZU CITY UNITED.EXEがユニークなのは、自治体である焼津市スポーツ交流振興協議会からの支援を得て運営を行っていることだ。

「我々の特色は焼津市から補助金をいただき、それに加えて地域の企業さんのご支援をいただいて運営しています。そのため参入に際しては『地域産業のPRおよび、地域の子どもたちの目標になって焼津を盛り上げる』を、ミッションに掲げています」(良知正浩オーナー、以下同)


3x3はストリートスポーツであり、基本的には観戦無料であることが特徴だ。YAIZU CITY UNITED.EXEも、とくに初期のころは事業性の壁に直面したという。その一方で行政からの補助金を得て運営している以上、公共性も求められる。そのバランスについては、ずっと頭を悩ませてきた。

チームの地域活動の様子©YAIZU CITY UNITED.EXE

「事業性を考えると、一般的にはスクール事業を始めようとなります。ですが学校の部活動が地域の部活動に移行し始めていて、今はいろんなクラブチームが、子どもたちのスクールを始めようとしています。この動きについては営利目的というか、事業運営のために地域の子どもたちを取り合っているような気もするんですよね。税金をいただいている我々のチームとして、そこに手を出すのはどうなんだろうと。そうすると、まったく事業性が作れない壁にぶつかりました。これまでの7年間は、私たちができることは何だろう、どうやって地域に恩返しができるんだろうということに悩み続けてきました」

事業性と公共性。二律背反するテーゼに挟まれながら、これが盤石の答えではないかもしれないがYAIZU CITY UNITED.EXEは、地域において自分たちの存在意義を明確にすることに軸足を置いた。

チームの地域活動の様子©YAIZU CITY UNITED.EXE

「我々の選手はみんな兼業選手で、普段は仕事をしながら週末にプロ選手として活動をしています。実はこれが、本来のスポーツの目的にいちばん合っているのではないか。スポーツの本来の意義は、人生を楽しむためのひとつのツールだと思うんです。そう考えれば、我々の選手たちはこの地域でそれを体現する、言わば旗振り役。僕たちが今いただいているような環境を、子どもたちに提供していく。子どもたちが人生を楽しむため、スポーツの環境を整えていくこと。それが僕たちのやるべきことであり、僕たちがこの地域に存在する意義になるんじゃないか。そういった考えに、行き着きました」

「焼津PORTERS」での3x3.EXE PREMIER誘致大会(2024年5月)の様子

新規参入ながら初年度から大会を誘致し、会場としたのは地元のシンボルである焼津漁港。多数の大漁旗が海風にはためき、磯の香りがする独特の大会の雰囲気は大きなインパクトを残し、Best Venue of the yearを受賞した。これをはじめコロナ禍の時期を除いては毎年のように大会を誘致するなど、積極的な活動に取り組んでいる。今年の3月には、子どもたちを対象にした大会、3x3.EXE GAMEも開催した。これは先の良知オーナーのコメントにもあった、「地域の子どもたちのために」の思いが立脚点にある。

「我々はこれまでも小さなゴールを持って行って、子どもたちにシュートしてもらうといったこともやってきましたが、果たしてこれは本質的なんだろうかと、これもまたずっと悩み続けていたんです。現在は子どもたちに3x3で遊ぶ機会をたくさん増やそうということで年に3回、大会を開いています」

3x3.EXE GAME(2025年3月)の様子©YAIZU CITY UNITED.EXE

3x3.EXE GAME開催も、そのひとつ。

「このときは、何百人の子どもたちが集まってくれました。3x3のいいところは仲良し4人組で参加できるので、全員がレギュラー。今この地域は3つの中学校が集まって、ひとつのチームだったりするんです。だから、ほとんどの生徒さんが補欠なんですよ。試合にはたくさん集まりすぎるので、1年生は試合や応援に来たらダメとかになっているんです」

YAIZU CITY UNITED.EXEが開く3x3の大会に参加すると、子どもたちは全員がレギュラーで試合に出られる。バスケットボールに限らず、どのスポーツもゲームに出てプレーするのがいちばん楽しいに決まっている。それを目指すから、普段の練習を頑張れる。

3x3.EXE GAME(2025年3月)の様子©YAIZU CITY UNITED.EXE

「クラブチームで一生懸命にドリブルの練習をすることも、これまたいいことなんです。だけどそれだけではなく、子どもたちが伸び伸びやれたり自由に表現できる場所を、たくさん提供していくことのほうが、理にかなっていると思うんです。だから我々がやっていることのほうが、スポーツの本質からすると自然なのかなと考えています」

YAIZU CITY UNITED.EXEが主管した3x3.EXE GAMEは、地域のお祭りのような雰囲気だった。ただし一般的なお祭りとは、本質的な部分が異なった。地域のお祭りは大人が機会を作って大人が運営し、子どもたちは参加者。だが焼津で行った3x3.EXE GAMEは、あくまでも子どもたちが主役のお祭りであったのだ。

「僕たちは参加者を募るのではなくて、参画者を増やそうという考えなんです。子どもたちの大会ではテーブルオフィシャルなども、出場する子どもたちにお手伝いしてもらいました。チアの子どもたちも、そうです。みなさんは参加者じゃなくて、参画者ですよ。みんなで大会を作ろうと、やっていったんです」

自主大会を開催した経験も踏まえ、3x3.EXEのブランドを掲げられることで、大会の価値が向上したと感じられたとも言う。

3x3.EXE GAME(2025年3月)の様子©YAIZU CITY UNITED.EXE

「リーグから賞品でボールをいただいたり、あとは3x3.EXE PREMIERで使っているようなバナーやグッズを貸していただいたのですが、それらが本物感があっていいんですよ。僕たちが開く草大会よりも、子どもたちはあれで相当、気持ちが上がったと思います」

地域に自分たちの存在意義を示していくことを含めてこれから先、YAIZU CITY UNITED.EXEは3x3のプロチームとして、どのように進んでいく考えなのか。

「行政からのご支援をいただいている以上、地域貢献をはじめとした社会的ミッションを維持していくことが、まず第一。競技力の面では確かな根拠はありませんが(笑)、いずれ強いチームになると思っています。今もそうですがいい選手が少しずつ集まってきていて、成績もそれなりのチームになるだろうと勝手に思っているんです。選手の夢は、外国のチームと戦うこと。みんな一生懸命にやってくれているので、いずれはそういう経験をさせてあげたい。ですが、それがチームの目的ではありません。我々の主たるミッションは、子どもたちに楽しい運動環境をたくさん作ってあげることです

良知オーナーは「3x3.EXE PREMIER 2024 ベストオーナー賞」を受賞

良知オーナーは選手たちに、つねづね「1に家庭、2に仕事、3x3はその次だよ」と話していると言う。プロである以上、結果を求められることは当然だが、スポーツの本質を捉え、それがすべてではないという考えが根本にある。

「僕自身も中学から大学までずっとバスケットをしていて、当時は3on3と言われていましたが、大学を卒業してからもそれを東京でやらせてもらっていました。56歳になりましたが、今も草バスをやっています。この歳になってもバスケットをやっているのが、実はスポーツの目的に合っているんだ。僕が成功者だって、選手たちには言っています(笑)」

YAIZU CITY UNITED.EXEの選手たちと良知オーナー(中央)©YAIZU CITY UNITED.EXE

プロとして勝利を求めることは必須であるが、それが最優先ではない。事業性と公共性の両立のように、相反するものを両目で捉えて運営しているからこそ、YAIZU CITY UNITED.EXEの独自性が際立つ。現在は、参戦から7シーズンを終えたところ。これから歴史を重ねていき、その独自性が3x3.EXE PREMIERのなかで、どんな色彩を放つのか楽しみだ。

(Text by カワサキマサシ)

TEAM information

Team:YAIZU CITY UNITED.EXE
(ヤイズ シティー ユナイテッド エグゼ)
Category:MEN
Hometown:静岡県焼津市
Since:2018