2022年は6つのチームが大会を誘致し、ホームゲームを通じて競技の認知拡大をはじめ地域活性化や新たなコミュニティを創造しました。3x3.EXE PREMIERの特徴でもありますが、駅前や街中、商業施設などの省スペースにコート・ゴールを設置するだけで大会を開催できるため、大会誘致はさまざまな可能性を秘めていると言えるでしょう。

本企画は、2022年シーズンで大会誘致を実施したチームオーナーに、大会誘致にかけた想いや背景を含め、2022年シーズン全体を総括いただく内容です。

全7回でお送りするシリーズ第6弾は、東京都港区港南の品川エリアを本拠地として構える『SHINAGAWA CC WILDCATS.EXE』。話を伺ったのは、2022年BESTオーナー賞を受賞した遠塚谷 流(とおづかたに りゅう)氏。SHINAGAWA CC WILDCATS.EXEにとって、あまりに多くの出来事があった2022年のメモリアルイヤーを、1つひとつ丁寧に紐解いていこう。

品川港南エリアに新たなカルチャーを。
1,000人の真のファンと、優勝という歓喜を。

「洗練されたビジネス街」というイメージが非常に強い品川港南エリア。2003年に東海道新幹線の品川駅が開業して以降、現在は世界有数の利用者数を誇るビッグターミナルを有する街へと変貌を遂げた。駅周辺の再開発も進み、オフィスビル、複合商業施設、タワーマンション等々が建ち並ぶ超高層ビル街でもあるが、平成から始まった街づくりであるため、古くからこの地を知る人にとっては「直近20年で大きく変わった、街の新たな様相」とも言える。そんな新しい街と共に「新たな文化を作ろう」と立ち上がったのが、2019年からPREMIERに参戦しているSHINAGAWA CC WILDCATS.EXEだ。

遠塚谷「PREMIER参戦して以来、コロナの影響もあってカップ戦やラウンド数が絞られたので、今シーズンの「8ラウンドやりきる」が久しぶりでした。期間も長く感じたので面白かったですが、その分チームとしても大変だったなと思っています。エースの出羽(#7)以外はほとんどケガしているくらいで、その中でやりくりしながら、かつレベルの高いBAY ZONEカンファレンスをどう勝ち抜いていくか。喧々諤々メンバーとやりとりをして、意見がぶつかるシーンもありました。試行錯誤のシーズンではあったんですけれども、最終的に総合6位。優勝を目指していたので悔しさはありますが、及第点ではあるかなと思っていますね」

これまでのシーズンを振り返る中で、こと2022シーズンは4期目のSHINAGAWA CC WILDCATS.EXEにとって、”初”となる事象が3つあった。通常の8ラウンドを国内でやりきることもその中の1つだ。

遠塚谷「2019シーズンも有観客ではあったんですが、我々はASIA EASTカンファレンスに所属していたため、沖縄や韓国で試合をしていたんです。だからお客さんがほとんどいなくて(笑)。とはいえ最後、六本木で開催されたプレーオフは本当に素晴らしい雰囲気でした。あの空気感を鮮明に覚えていて「あそこでもう一度やりたい」と全員が思っていたんです。全く同じ形ではないにしろ、2022シーズンはそれに近い環境で国内で8ラウンドをやりきれ、大森ベルポートの素晴らしい雰囲気の中でプレーオフを戦えたことは、私としてはもちろん、選手にとっても嬉しかったのではないかと思います」

3x3.EXE PREMIER 2022 PLAYOFFS in Omori bellport

“初”となった事象の2つ目は、大会誘致である。遠塚谷氏がチーム創設から検討していたことだが、コロナにより上手く身動きが取れなかった。ようやく、2022シーズンで叶ったのだ。

遠塚谷「誘致した品川インターシティは、我々のスポンサーである日鉄興和不動産さんが管理しているんです。我々品川CCは、3x3以外にもサッカーやアメフト、チアダンスなどのチームを持っているのですが、日鉄興和不動産さんには品川CC全体でお世話になっています。その担当者の方をはじめとする皆さんが「ここでやろうよ」と言ってくださったことが大きいです」

初年度から検討を重ねてきた結果、3年越しの実現となったRound.3・品川インターシティでの大会誘致。当日は、チームカラーであるネイビーブルーのフラッグを持って応援する人々で溢れ、会場は大いに盛り上がりを見せた。

遠塚谷「チーム創設当初から日鉄興和不動産さんと「大会誘致したいですね」って話にはなっていたんですが、コロナの影響で2020年と2021年は「難しい」という回答でした。とはいえ、やれる範囲でイベントを開催したりはしていましたが、今年になって「やろう!」という話になったときは嬉しかったですし、当日開催できたことを喜んでくださったこともよかった。そしてその場に人が集まって、品川インターシティの認知や集客に繋がっているリアルを目の当たりにできたことも、非常に感慨深かったです」

“ビジネスの街”での誘致が叶った結果、意外な反響もあったという。

遠塚谷「佐藤智也(#9)という選手がいるのですが、彼は仕事柄、品川周辺にお客様が多いんです。誘致の際、インターシティの入口に等身大パネルを設置しておいたら「「インターシティで(パネルの)佐藤さんを見かけました」といった連絡をいただいた」という良い話も彼から聞きました(笑)。そういった選手たちの仕事面においても良い影響があったからこそ、もっとサンプリングの配布やイベントの開催、SNSやキャンペーン等々、さまざまな仕掛けをしたかったなぁ……と、反省点も多いです」

挑戦したからこそ見えた結果。得た答えを、次にどのように活かしていくか。「初の誘致だったからこそ見えてきた景色もある」と、遠塚谷氏は続けて語る。

遠塚谷「たとえば品川CCと連携して、サッカーのミニゴールを設置してPK対決するとか、フリースローを試し打ちできるとか。これは今年の反省点でもあるのですが、バスケを観ていない人はどうしても手持無沙汰になってしまったり、自分の推しチームが出ていない時間ってぼんやりしてしまうので、もう少し視野を広げて大会を誘致したいですね。
3x3の大会そのものの運営はリーグがやってくださるので、どう色をつけていくかは我々次第です。来季も誘致したいと考えているからこそ、もっと大きなスポーツイベントのような形で広げたいですし、グッズも用意したい。人員を確保して、どんな仕掛けを造っていくかを考えながら、2023年はまたチャレンジしたいと考えています」

“初”となった事象の3つ目は、コートの完成である。バスケ界では非常に話題となったが、NBAのスーパースター、ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリー選手のシグネチャーブランド“カリーブランド”(アンダーアーマー)の取り組みである『カリーコート』を、SHINAGAWA CC WILDCATS.EXEはOPENさせた。

遠塚谷「ビッグサプライズでしたよ(笑)。本当にこんな話があるんだな、という感じでした。そもそもバスケコートは造る予定だったんですが、色々あってお金が足りなくなってしまったんです。そこで「コートの価値をどんな訴求をしたら伝わるか」とディスカッションして文章を書いて、クラウドファンディングを実施したりする中で、アンダーアーマーのカリーブランドの方の目に留まって、「コートの理念や価値観と合いそう」ということで、具体的に話が進んでいきました。そこから色々相談しながら決まって、9月24日(土)にオープンすることができたんです」

遠塚谷「カリーコート天王洲アイルオープン以来、たくさんのお客様にお越しいただいています。バスケをプレーしに来る方はもちろんですが、日本全国各地から、ときには海外から観光客の方がいらっしゃって「カリーコートを一目見たい」ということで足を運んでくださっています。品川エリアの新しいランドマークとして、スポーツツーリズムという形でも注目していただいております。
毎月1回アンダーアーマーと共同して、SHINAGAWA CC WILDCATS.EXEの選手が講師となりアンダーアーマークリニックを開催していますが、毎回定員オーバーのお申し込みをいただいております。嬉しい悲鳴です」

[左] 品川CC代表取締役の吉田氏。[右]SHINAGAWA CC WILDCATS.EXEの越川選手

8ラウンドをやりきったこと、大会誘致、カリーコートのオープン。”初”となる3つの事象を経験しても満足する事はない。SHINAGAWA CC WILDCATS.EXEは、すでに次を見据えている。

遠塚谷「来シーズンは優勝したい。正直、BREXさんが何連覇って悔しいですよね。もっと言えば、仮に相手チームにマイケル・ジョーダンやケヴィン・デュラントがいたとして「これは無理だよ」ではなくて、勝てる方法を考えて挑戦するのが面白いじゃないですか。彼らの弱点を分析して、我々の強いところを当てれば、勝てる確率は論理的には上がります。そのチャレンジしていく過程も見せていきたいですね。
また、ケヴィン・ケリーという『WIRED』という雑誌の創刊編集長の言葉に「1,000人の真のファンをつくれば、個人で独立して創作活動を続けていける」というものがあります。その人がどこで公演をしようが来てくれて、商品を売れば買ってくれる。1,000人が1年間で1万円使ってくれたら、年収1,000万円になる。3x3チームの活動はまだスモールビジネスだからこそ、その考え方にならって、我々もまずは1,000人の真のファンを作ることを目指していこうよって話はしています。1,000人って大変なのですぐにはできませんが、応援してくれて、遠征にも来てくれて、新しいグッズやユニフォームを販売したらすぐ買いたいと思ってくれるようなファンを作ろう、と」

1,000人の真のファンを作るため、そして優勝のため。SHINAGAWA CC WILDCATS.EXEのやるべきことは、非常にシンプルである。

遠塚谷「じゃあ1,000人の真のファンをつくるために何が一番良いかって、デジタルツールはもちろんなんですがやっぱりオフラインですよね。誘致のときにそれを強く感じたんです。ファンの皆様が選手を見て「カッコいい」って言ってくれて、サインをTシャツに書いてもらって、サインを消したくないからって洗わずに取っておくとか。そういうことだと僕は思うんです。SNSとかキャンペーンとかありますが、軸はオフラインで選手とファンが触れ合う機会を増やしたい。エキシビジョン、クリニック、イベント等々、やりたいことはまだまだ沢山あるので、2023シーズンの大会誘致のリベンジも含め、もっとこの場所に根差して、新たな文化として3x3を盛り上げていきたいですね」

2023年、SHINAGAWA CC WILDCATS.EXEがどんな景色を見せてくれるか

◤TEAM information◢
Team:SHINAGAWA CC WILDCATS.EXE
Since:2019
Hometown:東京都港区港南
SNS:
(Twitter)https://twitter.com/scc_wildcats
(Instagram)https://www.instagram.com/scc_wildcats/
(公式サイト)https://shinagawa.cc/3x3-basketball/
(カリーコート天王洲アイル)https://base.shinagawa.cc/home/currycourt

◤大会誘致に関するお問合せはこちら◢
premier@exebasketball.com

(Text by コバヤシ ワタル)