広島市をホームにする3STORM HIROSHIMA.EXEは、2019年に3x3.EXE PREMIERに参戦を開始。Bリーグの広島ドラゴンフライズでもプレーしていた仲摩匠平オーナーが、「自分が生まれ育った広島に3x3を広め、この新しいスポーツで街を盛り上げたい」との思いでチームを立ち上げた。

「私自身はBリーグで、選手としてプレーしていました。ですが3x3.EXE PREMIERに参入するにあたって、今度は運営する側の立場になるので、本当にやっていけるのかという不安はありました。それと同時に、これから3x3を含めたアーバンスポーツが盛り上がってくる期待がありましたね。1年目は大変なこともありましたが、それらを乗り切って、チームとしてもクラブとしてもステップアップするぞと意気込んでいた2年目でした……」

仲摩オーナーの胸に、辛かったあの1年の記憶が蘇る。

「2020年はコロナ禍で、リーグ戦の全日程が中止になりました。シーズンの中止が決まる前にある程度の協賛を集めていたにも関わらず、スポンサーの方々にお届けできる商品がない。集めたお金をどうしていくか、スポンサーの方々に我々の活動をどうお見せしていくかなど、あれこれと手を尽くしながら活動していった年でしたね」

チームとしての活動ができないゆえ、SNSやオンラインを使った発信など、試行錯誤を繰り返しながらなんとか乗り越えた。あのときの苦労からどんなことが得られたかと問うと、参戦わずか2年目に荒波を経験したオーナーは「しなくてもいい経験だったかもしれませんが」と、軽く笑みを浮かべながら話を続ける。

「あのシーズンがあったから、もう大抵のことは乗り越えていけるかなと思っています。強い免疫がついたと言いますかね(笑)」

苦難の1年を乗り越え、昨2024年で3x3.EXE PREMIER参戦は5シーズン。参戦を続けるリーグの魅力について、こう語る。

「3x3はお客さんにとっては気軽に見に行けますし、選手は今の仕事を辞めなくても、週末の大会に参加できる。生活を変えなくてもプロ選手になれる選択肢が得られ、それぞれの可能性が広がる競技が増えたと思います。それにリーグのレベルも、高い基準にある。FIBA承認、JBA公認のリーグは、3x3.EXE PREMIERだけなんですよね。試合が高い質で行われることはプレーする選手にとってはもちろん、見ていただくお客さんにとっても良いことです」

「呉市中央公園(広島県呉市)」での初の誘致大会の様子(2019年7月)

3STORM HIROSHIMA.EXEは、地元の人たちに自分たちの試合を見てもらい、3x3.EXE PREMIERの大会の魅力を生で感じてもらうことに力を注ぎ、1年目から欠かさず誘致を続けている。

「おかげさまで年々、来場者の数は増えてきています。東京オリンピックで3x3が正式競技になり、テレビ放送されたことも追い風になりましたね。3x3は屋外で行っている競技で、選手との距離が近い。会場ではほかのイベントも併催したり、キッチンカーに来ていただいたりしています。そういった意味でお客さんはフェスと言いますか、そんな感覚で大会を楽しんでくださっていますね」

地方都市での大会は町のお祭りのような趣があり、大都市で開催されるものとはまた違った風情がある。

「本当に、そうですよね。3x3にお祭りだったり、ほかのイベントを掛け合わせたりするのも面白い。3x3は省スペースでフットワーク軽くできるので、それこそほかの競技の大会に、3x3のコートを作ってコラボすることもできる。その柔軟さがアーバンスポーツの強みであり、魅力だと思っています」

最近は地元の広島市だけではなく、山口県宇部市に大会を誘致。ホームタウン以外に大会誘致を行ったのは、3x3.EXE PREMIERの10年の歴史のなかで、初めてのことだった。

「そのきっかけは本当に、たまたまでした。ある人から、宇部市がこれからアーバンスポーツとeスポーツに力を入れていくということを聞き、その人を介して宇部市長をご紹介いただいたんです。それで市長にお会いして『3x3で、こういう活動をしています』などとお話しましたら、『ぜひ大会を宇部市に誘致しよう』と、トントン拍子で話が進みました」

山口県宇部市に3x3.EXE PREMIERを誘致

宇部市がスポンサーになって、2022年に初めて大会を開催。それから3年連続で宇部市で大会が開かれ、昨2024年には仲摩オーナーと山口県宇部市はリーグが制定する「3x3 Town Award」(※3x3の街として地域発展、普及に貢献したチーム、団体に贈られる)を受賞している。

「広島もそうですが、山口県もバスケットボールが盛んです。地元以外にも、私たちの活動を広げるのは意義のあること。それに山口県宇部市で盛り上げていって、成果があった内容やコンテンツを逆輸入ではないですが、広島に持って帰ってくるのもありだなと思いました。宇部市さんにも私たちにも、双方にメリットがある取り組みだと思っています」

3x3.EXE PREMIERは参入障壁が低い一方で、それゆえに継続する難しさに直面するチームが現れてしまうのも事実。その要因のひとつは、活動資金。3x3.EXE PREMIERで5シーズンにわたって参戦を続け、古参の部類に入るようになってきた3STORM HIROSHIMA.EXEは、どのようにその難題と向き合ってきたのか。

「もう本当に、動くしかないですね。オーナー企業がどんと資金を投下する環境であれば別ですが、私たちには楽ができたり、必殺技的な資金の集め方はありません。私はいろいろな方と会って、なにかの会やイベントが開かれると声をかけていただきましたら、全部に参加しています。顔と顔を合わせて、足を使ってしっかりと一社一社に向き合っていく。そうやって協賛いただいた企業様から、また別の企業様をご紹介いただけることもあります。やはり最後は人と人なので、地味かもしれませんが、そうしたことを続けていくことだと思っています」

現実的な課題と向き合い、関係筋と顔と顔を合わせる付き合いを実直に続けてきた。オーナーがその姿勢を崩さずにやり通してきたからこそチームは継続し、1年目から地元広島で大会を実施し続けられ、宇部市での大会開催へと発展したのだ。そうした現実に目を向けながら、同時に志の部分であるチームが目指すビジョンを、確固として持つことも大事だと言う。

「3x3.EXE PREMIERのなかには、本気で世界を目指しているチームもあれば、地域貢献を主体に考えているチームもあります。そんななかで新規にチームを立ち上げるとすれば、どこを目指していくのかという、自分たちの軸を明確にしないといけない。世界を目指すという大きなテーマだけを打ち出して、地元の企業様に協賛をお願いに行っても『それは私たちの地元と、どういう関係があるの?』となりかねません。地域貢献がメインであっても、そこに明確な意思がないと賛同は得られないでしょう。自分たちの軸をしっかりと定めて、それをブラさずに続けていく。チームを継続させていくためには、それが大事だと思います」

活動開始から5年は、あくまでもひとつの区切り。これからの10年、20年と将来を見据えた未来像が、2021年に「Best Owner of the year」(※チームの活動を通して3x3や地域、社会の発展に寄与したオーナーに贈られる)に輝いた仲摩オーナーの頭のなかにある。

2021シーズン「Best Owner of the year」受賞

「チームの目標としては、もちろんプレーオフ進出や優勝があります。ですが、そもそもこのチームを立ち上げたのは、広島の方々に3x3のことを知ってもらい、その魅力を感じて親しんでいただきたい思いからでした。そこが、私たちの軸。だから今後は、広島県内に屋外コートも含めて、もっとバスケットボールができる環境を増やしていきたい。自分たちの軸をブラすことなく、3x3も5人制も含めて、しっかりと広島のバスケットボールを盛り上げていく活動をしていきます」

広島のバスケット熱を、もっともっと高めていく。そうして、やがては地元の人たちが自認するのはもちろん、他県の人からも「広島はバスケットの街」と認知される日が来ることを求め、仲摩オーナー率いる3STORM HIROSHIMA.EXEは歩みを止めない。

(Text by カワサキマサシ)

TEAM information

Team:3STORM HIROSHIMA.EXE
(スリストム ヒロシマ エグゼ)
Category:MEN
Hometown:広島県広島市・山口県宇部市
Since:2019