3x3.EXE PREMIER JAPANには今季、男女あわせて10チームが新規参入します。本企画は新規参入チームのオーナーに参入の背景、クラブが目指すものなどを語ってもらい、新たに3x3.EXE PREMIER JAPANに加わる仲間を紹介するシリーズ連載です。
第3回は、CENTRAL TOKYOに新規参入するNIHONBASHI WEALTH MANAGEMENT.EXE。アマチュアのカテゴリーで国内トップレベルの大会に参戦し続けてきた彼らが、プロの舞台へと進んだ理由、そしてそこで目指すものとは-

「より高いレベルへの挑戦」
プロ化へと舵を切った彼らの選択と、目指す未来

石田選手 「正直なところ、現状のプレー環境では満足できなくなっていたんです」

NIHONBASHI WEALTH MANAGEMENT.EXEの石田以俊(いしだ・いしゅん)選手は、そう本音を口にした。

石田選手は小学校3年でミニバスを始め、中学時代は福岡県選抜でキャプテンを務めて、チームを九州大会3位に導く。高校は茨城県の土浦日大高に進み、ここでも関東大会3位やインターハイ、国民体育大会出場と結果を残した。新規にバスケ部の強化を始めた桐蔭横浜大でプレーしたのを最後に一線を退き、横浜国立大学大学院在学中に、同大学のバスケットボール部のコーチを務めるなどしたあと、現在はボールメーカーのモルテンで商品企画の仕事に就いている。


石田選手 「僕は5人制をずっとやっていて、3x3にあまり興味はありませんでした。だけどあるとき、会社で3x3を体験するイベントがあって、やってみると『これは面白い、 自分に合っている』と思ったんです。それと東京の大森に住んでいたときに、大森ベルポートという商業施設で3x3.EXE PREMIERの試合があって、近所なので見に行きました。そこで魅力に取り付かれて、自分でチームを作ってやってみようと思って始めました」


石田選手が中心となってチームを結成し、3x3.EXEが主催する、プロ・アマが参加できるオープントーナメントの3x3.EXE TOURNAMENTや、JBA主催の3x3 JAPAN TOURなどに継続的に参加し実力を高めてきた。

石田選手 「もっと高いレベルでやりたかったのが、本当に正直なところです。率直にその思いで3x3.EXE PREMIERに参入を決めました。ただもっとレベルが高いところでやるために、企業様のご支援というのは必要不可欠です。そういったところでサポートいただける方を募って、参入に至ったという流れになります」

彼をもっとも厚くサポートするのは、石田選手の実兄。兄が代表を務め、金融コンサル業を展開する日本橋ウェルスマネジメント株式会社が、石田選手の活動を支援すべく運営資金を出資した。チーム名は、ここからきている。石田選手はプレーヤーに専念し、IT系の会社を経営する山下雅弘氏がオーナーを務める。

山下オーナー 「共通の知人を通じて、今回のお話をいただきました。僕自身の経歴はバスケとは完全に無縁で、むしろ素人なんです。でもスポーツは全般的に大好きで、昔アメリカに住んでいたころは、NBAの試合をよく見に行っていました。たまたま去年、東京オリンピックで3x3の試合をテレビで見ていて『これも面白いな』と思っていた矢先に、今回のお話をいただいたので、ぜひ関わりたいと思いました」

山下オーナーは自身の役割のひとつを、側面からチームを手厚くサポートすることだと捉えている。

山下オーナー 「各々が働く職場があって、時間の制約がある。そのなかでなるべく仕事とバスケ以外のことで、余計な時間やお金を使わないことだったりとか、そういうところを上手く省けるように支援していきたい。

チームは練習時間がなかなか取れないぶん、できるだけ集中して効率よく練習したいと思うんです。そのために負担になる部分があるんだったら、それもなるべく省く。そのサポートをしていきたいと思っています」

チームとして結果にこだわるのはもちろん、デュアルキャリアの支援にも力を注ぐ。

石田選手 「うちの選手全員に言えることですが、自立したいち社会人であることが、チームを運営するうえで重要なんですよね。コミュニケーションをしっかりとって、お互いを尊重しあい、役割分担してやっていく。そういった会社組織のなかで当たり前にやっていることは、チームでも求められます。それがきちんとできている選手たちが揃っているので、そこに僕らの強みがあると考えています。社会人であることをベースに、3x3のキャリアを築く。我々のコンセプトは、そういうことです」

3x3.EXE PREMIERも、デュアルキャリアを推奨する。その取り組みについて山下氏は、オーナーの目線からこう語る。

山下オーナー 「3x3.EXE PREMIERは、デュアルキャリアがあることが魅力だと思うので、すごく賛同できます。今後もバスケだけじゃなくて、いろんな競技に波及すればいいと思いますね。その仕組みをリーグのほうでどんどん構築していって、ほかのスポーツにも当てはまるモデルケースになれば、すごくいいんじゃないかと思っています。同時に、我々がロールモデルになれるデュアルキャリアの築き方ができれば理想的なので、それを目指します」

NIHONBASHI WEALTH MANAGEMENT.EXEは、石田選手の「もっと高いレベルでやりたかった」を現実にするためだけに、プロへと舵を切ったのではない。

石田選手 「成績面では、初年度はプレーオフ出場を目指したい。短期的にチームの目指すところは、私のように会社員で働きながらトップレベルで戦いたい選手たちを、より多く受け入れて育成していきたいと思っています。

私は今32歳なので、第一線でやれる時間は、そんなに長くはないかもしれません。でも自分がプレーをやめたらサヨナラではなく、選手引退後も、次の世代の選手たちがバスケをやめずに続けられる環境を作って行きたいという思いがあります。最初の2、3シーズンは、そういった選手たちを受け入れられるような、土台を作ってきたい。Bリーグじゃない、実業団じゃないもうひとつの選択肢に、このチームがなればいいなと思います」

一方で山下氏がオーナーとして中長期的目標に掲げるのは、チームと競技の認知を広めること。

山下オーナー 「石田選手が言ったことに加えてプロチームでもありますので、チームの認知度を上げる、3x3全体の認知度を上げることもやっていきたい。僕のフィールドであるネットマーケティングとか、今だったらSNSや動画などを通じて発信していくことも、ひとつの手だと思っています。

そういったツールを通じて認知を高めて、たとえばスポンサーさんや、興味を持ってくれる自治体さんだったりといっしょになにかをやっていければ、僕らのモチベーションにもつながる。そうやって企業や団体、自治体から興味を持っていただけるような普及活動をしていきたいと考えています」

プロ化するチームのメンバーは、昨年もいっしょに戦った選手をベースに、必要な補強を施した。

石田選手 「昨年JAPAN TOURのEXTREMEでいっしょに戦ったメンバーがベースです。それに加えてトップのチームともやっていけるように、高さの部分を補強しようと考えて外国籍選手1名と、サイズのあるフォワード2名を新たに加えました。

我々には、絶対的なエースがいるわけではありません。連携やコンビネーションなど、チームでどうやって戦っていくかが大事になります。玄人受けする要素になると思いますが、そこを見ていただきたいですね。また、うちのインサイド陣は強力なので、派手なブロックやダンクがどんどん出てくるような戦い方になると思います。迫力がありますので、そこも注目です」

新規参入とはいえ、チームのベースはできている。シーズンを前に不安もなくはないが、ふくらむ期待のほうが大きい。

石田選手 「そうですね。ただ去年よりもう一段、二段レベルアップしないと、上のチームに勝てないのはみんな自覚しています。どうやって、レベルアップしていくか。山下さんのご支援もありまして、昨年よりも格段に良い環境でプレーできています。そういったなかで、どんどんレベルアップしていこう。そういう気持ちで日々、やっています」

相手がいなくなったアマチュアからプロへと転身して迎える、最初のシーズン。NIHONBASHI WEALTH MANAGEMENT.EXEは、最初の第一歩にどんな足跡を刻み、そして未来へとつなぐなにを残すのか──。

(Text by カワサキマサシ)

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